すべてのRFCが、標準、というわけではない

Network Working Group                                         C. Huitema
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Category: Informational                                        J. Postel
ISI
S.Crocker
CyberCash
April 1995

メモの状態

インターネットコミュニティへの情報提供のためのメモである。インターネット標準の特定を意図していない。配布は、無制限である(*1)(*2)。

概要

本文書は、RFCsの記録文書と「インターネット標準」の関係を論じている。

すべてのRFCが、標準、というわけではない

「コメントをください」(RFC)文書シリーズは、「インターネット標準」文書および、IESG・IAB・インターネットコミュニティーの出版物のための公的な出版手段である。しかし、RFCという同じ名のもとで、「インターネット標準」文書と「情報提供的」informational 文書を公刊するのが理にかなっているのかという質問が、時どきに、とくにここ1、2年では半年一度の頻度で、投げ掛けられてきた。そのようなことが、「実際上の標準」と「単なる出版物」を混同させる原因になっているのではないかという点が、議論になっているのだ。

残念なことにRFCの公刊が、公認的意味合いを持つものだとする誤解が拡がっている。そうではない。少なくとも、公刊とは、ある刊行シリーズへの掲載にすぎない。それ以上の意味は持っていない。事実、インターネット標準化過程とのかかわり方によって、それぞれのRFC文書はそれぞれ違った文書性質 status を持っている。

  • 「情報」的なもの
  • 「実験」的なもの
  • 標準化軌道(PS,DS,IS)にあるもの
  • 軌道をはずれ歴史的なものとなったもの

ステータスはRFC文書の1ページ目に必ず表記される。加えて、定期的に刊行される「インターネット公式プロトコル標準」であるSTD1の名を持つRFCの中にも、表記される。

ところが、あるRFC引用・参照のさいに、そのステータス部分が無視されてしまうことがあるのだ。このことが、上の混同が拡がっている要因となっている可能性があるのだ。


ステータスを知る重要な情報源としては、次の2つがある。

  • 「インターネット公式プロトコル標準」と銘打たれて定期的に発行されるRFC文書に、「インターネット標準」という表記で纏められるもの。
  • それらの文書はまた、STDと呼ばれるサブシリーズ文書に括られ分類化 documented される

Huitema, Postel & Crocker                                       [Page 1]

ある仕様 specification が「インターネット標準」として採用された時、そのRFCには「STD xxx番」という記述が付加される。ただしその後も、そのRFCの通し文書番号は変更されない。RFCシリーズ内の(アーカイブの)場所 place も変わらない。


このRFC番号とSTD番号の間には一対一の対応関係はない、この点、大切なので留意してほしい。

STD番号は、あるプロトコルを示す番号である。たほう、RFC番号は文書(アーカイブ)シリーズの場所の特定に用いられる。したがって、複数の文書が、単一の標準プロトコルの仕様を指定するために用いられることもありえる。

IABは、標準化文書のステータスを広く浸透させるために、次のようなRFC文書の取り扱いを人々に求めてきた。

  • 標準化軌道 track 上の文書において、相互の文献参照を行うさいにはRFC番号よりもSTD番号を用いること。
  • 「web」のハイパーテキスト技術を使って、標準化過程の状況を公知すること。

加えて正確を期すために、「インターネット標準」一覧として「STD-1」文書の「html」版をつくりRFCの現行文書庫 repository に置くことも要請してきた。

また、STD-1文書の機能を拡張することも現在検討中である。その拡張とは、「標準になることを要求している標準」proposed (standard) あるいは「標準案状態にある標準」 draft (standard) の仕事の状態も含めて、軌道上にある作業進捗状況を記しておく、というものである。

単一の資料体 A Single Archive

IABは、インターネットコミュニティは、RFCがまとまりをもつシリーズであったということから意義深い便益を得てきたと、確信している。

文書を見つけ検索が容易なこと。また、ファイルサーバを用いて組織だった文書管理が容易なこと。長きにわたって、この点は、とても大切な点であったのだ。

過去の経験によっても、サブシリーズや特定の範囲に限って文書アーカイブをグループ化してしまうと、文書がネットワークから消されてしまう傾向にあるのだ。また、今までと違った方法を用いたからといって混乱が少なくなる、というようなことも言えない。


加えて、標準化過程の外にある補足的文書が、標準化過程自身に危害を加えるものでないという点についても確信している。先にのべてきた問題解決のためのIABの諸要望こそが、ネットワーク化されたハイパーテキスト技術の開発をベースにして、文書の「標準」化を容易に保てるし、これまでよりも良好に文書公開を行えるのだ。

無視、ではなく、文書、を。

RFCシリーズは、その性格上「情報提供」的文書を含む。「実験」的文書も含む。それゆえに、文書全体が公的プロトコル仕様書で「あるかのように見えてしまう」。そこには、一種の知覚問題が生じる。見当外れのベンダーが、人々に対して「かのよう」に見える文書に適合することを要求するかもしれない。誤解した顧客側も、自分たちは「インターネット標準」を購入しているのだと信じるかもしれない。

Huitema, Postel & Crocker                                       [Page 2]
RFC 1796               Not All RFCs are Standards             April 1995

IABは、このような見当違いのベンダーおよび誤解した顧客にたいして、適切に手を差し伸べれば、彼らを正しい方向に誘うことができる、と信じている。

「情報提供的」、「実験的」RFC群を、「インターネット標準」とミスリードするベンダーがいるという証拠は、ほとんどないが(*3)、もしそのような企てがあるとすれば、ミスリードに対する適切な応対が必要となるだろう。

IABは、オープンな環境で開発される仕様がインターネットコミュニティを支えるのだと信じている。インターネット標準化過程はオープンでありレビューを完全に保証している。そして、インターネットプロトコル仕様の発展のためのまっとうな道筋は、IETFを通じてたどられるのである。

同時に、IETFの標準化過程外の仕様へのアクセスによっても、インターネットコミュニティは支えられてきた。それらプロトコルが、性質上実験的なものか、私的に開発されたものなのか、標準化軌道を辿るためのコンセンサスを十分得られなかった仕様であるのか、ということは別としても。

IABは、公表する、ということは、無視する、ということよりも、好ましいということを確信する。

ある仕様が、インターネットで広範に配備 deployed されているプロダクトで使われることがなくなったとする。その場合、そのようなものであっても、仕様が私的な文書貯蔵庫に秘匿されるよりはRFCとして検索が容易に行われるものであることが、好ましいことなのである。

Huitema, Postel & Crocker                                       [Page 3]
RFC 1796               Not All RFCs are Standards             April 1995

セキュリティに関する考察

セキュリティの問題は、このメモの中では論議されていない。

著者のアドレス

    Christian Huitema
    INRIA, Sophia-Antipolis
    2004 Route des Lucioles
    BP 109
    F-06561 Valbonne Cedex
    France
    Phone: +33 93 65 77 15
    EMail: Christian.Huitema@MIRSA.INRIA.FR
    Jon Postel
    USC/Information Sciences Institute
    4676 Admiralty Way
    Marina del Rey, CA 90292
    Phone: 1-310-822-1511
    EMail: Postel@ISI.EDU
    Steve Crocker
    CyberCash, Inc.
    2086 Hunters Crest Way
    Vienna, VA 22181
    Phone: 1- 703-620-1222
    EMail: crocker@cybercash.com

Huitema, Postel & Crocker                                       [Page 4]

*1: translator akira yoshii,初出200301214

*2: 以下の原文は、http://www.rfc-editor.org/info/rfc1796である。"Not All RFCs ar Standards",April 1995

*3: 訳者注:いうまでもなく、そのようなベンダーがいるからこそ、このRFCが牽制球として書かれているのである。

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